膝関節は前後の動揺(ぐらつき)を防ぐために、十字の形をした2本の十字靭帯、すなわち前十字靭帯と後十字靭帯が存在します。後十字靭帯は親指程度の大きさで、前十字靭帯は小指程度の大きさです。強度は後十字靭帯が前十字靭帯より強いため、後十字靭帯より前十字靭帯の損傷を多く認めます。

 

前十字靭帯損傷はバレーボールやバスケットボール、スキー、体操などのスポーツ活動中での発生を多く認めます。一方、後十字靭帯損傷は交通事故や労災事故での発生を多く認めます。又、十字靭帯損傷は、他の靭帯損傷や半月板損傷を合併している事が多く、その診断や治療に関しては注意を要します。

 

前十字靭帯損傷(ACL損傷)

前十字靭帯は大腿に対して下腿が前方へ移動する動きを制御する作用を有します。従って、前十字靭帯が損傷すると下腿が前方へ動揺する(ぐらつく)事になります。スポーツ活動中に損傷する事が多く、ジャンプや着地した際や急な減速や方向転換の際に損傷します(膝に外反ストレスが加わり、同時に下腿の内旋と前方移動が加わった際に損傷します)。

 

女性の方が男性より2~3倍多く、年間2~3万件発生しているようです。症状は受傷時に「ポキッ」と言う断裂音を認め、膝の痛みや腫れを訴え、運動障害を来たします。陳旧例(時間の経過した症例)では関節の不安定感や膝崩れ現象(歩行中に不意に膝がガックと抜ける感じ)、脱臼感を訴えます。

 

診察では関節の不安定性(Lachmanテスト、前方引き出し徴候)が陽性となり、関節穿刺にて関節内血腫(関節内の出血)を認めます。尚、スポーツの際に膝を捻挫し、関節内血腫を認めた場合、4人のうち3人はACL損傷を有するといわれてます。ストレスレントゲン検査では前方への不安定性が確認され、時に、剥離骨折を認めることもあります。診断にはMRIが有用です。MRIの診断率は90%程度といわれております。また、多くは内側側副靭帯損傷や半月板損傷を合併し、詳細な状況把握には関節鏡が必要となります。

 

治療は保存的治療(手術しない方法)と手術的治療とにわかれます。保存的治療は部分断裂の症例や小児、高齢者が対象となり、装具療法(硬性装具とサポーター)や筋力強化訓練、ストレッチングが主な治療法となります。しかし、前十字靭帯は一度損傷すると自然治癒(回復力)が悪いため放置すると、将来、半月板損傷や変形性膝関節症の発症を招きます。

従って、保存的治療は治療成績が不確実のため、青壮年者やスポーツ愛好家の完全断裂例では積極的に手術が行われる傾向にあります。手術的治療は年齢や性別、職業、スポーツなどの趣味を考慮した上で、関節鏡視下で自家腱(自分の膝周囲の腱、膝蓋靭帯腱・ハムストリング腱など)や人工靭帯などを用いた靭帯再建術が検討されます。スポーツ復帰には約6ヶ月間程度が必要です。尚、骨端線閉鎖前の小児の手術は、未解決な問題が多く、手術の適応に関して慎重を要します。

 

後十字靭帯損傷(PCL損傷)

後十字靭帯は大腿に対して下腿が後方に移動する動きを制御する作用を有します。従って、後十字靭帯が損傷すると下腿が後方へ動揺する(ぐらつく)事になります。交通事故の際にダッシュボードで膝を強打した時や膝をついて転倒した際に下腿が前方より外力を受けて損傷します。

 

症状は打撲した下腿前面の痛みや膝裏の痛み、腫れ、運動障害です。陳旧例(時間の経過した症例)では関節の不安定性や脱臼感を訴えます。診察では下腿が後方に落ち込み、関節の不安定性(後方引き出しテストなど)を認め、関節穿刺にて血腫を認めます。ストレスレントゲン検査では後方への不安定性が確認されます。時に、剥離骨折を認める事もあります。診断にはMRIが有効です。しかし、確定診断には関節鏡が必要となります。

 

治療は保存的治療と手術的治療とに分かれます。後十字靭帯損傷は前十字靭帯損傷に比べて日常生活動作に支障を来たす事が少ないため、多くは保存的にギプス固定や装具療法、筋力強化訓練で経過観察します。手術的治療は、若年者で、動揺性の著しい症例が適応となり、年齢や性別、職業、スポーツ等の趣味を考慮した上で詳細な検討がなされ決定されます。

 

膝靱帯損傷

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