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変形性股関節症

変形性股関節症

変形性股関節症は股関節に対する血液循環が不十分であったり、関節の酷使(こくし)によって関節軟骨に変性が起こり、軟骨下骨(なんこつかこつ)には骨改変が起こって、それらの結果として股関節の変形や破壊が起こった状態です。

 

特発性のものと続発性のものとに分けられます。特発性のものは、解剖学的には正常に発達したのちに、成人になってから発症したものです。続発性の場合の原因疾患には、先天性疾患が多く、先天性股関節脱臼(こかんせつだっきゅう)、臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん)があります。そのほかペルテス病、大腿骨頭壊死(だいたいこつとうえし)、大腿骨頭すべり症などでも起こります。欧米では特発性股関節症が約50%を占めるのに対し、日本では大多数が続発性股関節症です。その他の要因として、女性の発症が極めて多いことから、遺伝的な因子や、肥満、加齢などが考えられます。関節滑膜(かつまく)に神経はありませんが、滑膜に繰り返し刺激が加わると炎症が生じ、疼痛を引き起こします。疼痛は股関節痛とは限らず、臀部(でんぶ)痛、大腿部痛、あるいは膝上部痛を訴えることがあり、注意が必要です。疼痛に引き続き筋萎縮が起こり、筋力の低下が認められます。次に関節変形と運動制限が起こり、股関節屈曲拘縮(くっきょくこうしゅく)になります。小・中臀筋(でんきん)に機能不全が起こり、歩行が困難になります。

 

診断には、X線所見で関節のすきまが狭くなっていること、荷重部の骨頭や臼蓋の骨硬化像、骨棘(こっきょく)形成、骨嚢胞(こつのうほう)の形成を確認します。さらに進行すると、関節のすきまがなくなります。末期では骨頭や臼蓋の破壊、変形、関節亜脱臼(あだっきゅう)などが起こってきます。

補助的に断層撮影、CT撮影も行われます。その他の画像所見としては、骨シンチグラフィやMRIも参考になります。また関節液がたまっているのが認められます。関節液は淡黄色透明で強い粘り気があります。化膿性の炎症ではないので、細胞数の増加はみられません。血液検査でも、炎症を示す所見はみられません。

 

治療は保存的治療と手術的治療とに分かれます。保存的治療はX線所見が認められても、疼痛が軽微であったり、持続時間が短い場合に行います。具体的には体重のコントロール、筋力の強化が中心になります。体重のコントロールは、管理栄養士による食事指導、運動処方によって行います。手術的治療では、臼蓋形成術、寛骨臼(かんこつきゅう)回転骨切り術、キアリ骨盤(こつばん)骨切り術、大腿骨骨切り術が多く行われます。股関節形成術、とくに人工関節置換術(ちかんじゅつ)は、60歳以上の末期股関節症の患者さんに多く行われます。近年、人工関節置換術が増えていますが、頻度は少ないものの術後に肺塞栓(はいそくせん)、血栓性静脈炎(けっせんせいじょうみゃくえん)、異所性骨化(いしょせいこっか)などが起こることがあるので注意が必要です。

 

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